多剤耐性アシネトバクター検出事例に関するご報告

 当院へ2017年4月から2018年4月に入院されていた患者さまのうち、5名の方から感染症法で規定された多剤耐性アシネトバクターが検出されました。この耐性菌はIMP-1という抗菌薬に対する薬剤耐性遺伝子を保有しており、この他に多剤耐性ではないものの、同じ耐性遺伝子を持つ耐性アシネトバクターが2016年9月以降当院に入院された患者さま10名から検出されております。多剤耐性を含むIMP-1遺伝子保有耐性アシネトバクターにより感染症を発症された方5名のうち4名の方が亡くなられ、うち3名の方は耐性アシネトバクター感染が病状の進行に影響を与えた可能性があるとの結論に至りました。亡くなられました患者さまには心よりご冥福をお祈り申し上げますとともに、ご家族の皆様に対しまして、深くお詫び申し上げます。

 また、2018年4月の事例以降本日まで当院入院患者さまにおけるIMP-1遺伝子保有耐性アシネトバクター検出例はございません。当院で治療をされている患者さま、ご家族の皆様ならびに、地域の皆様、関係各位の方々に対しましてもご心配をお掛けしますことを深くお詫び申し上げます。

                          2018年8月3日 

                              鹿児島大学病院長 夏越 祥次

(参考)

(1)多剤耐性アシネトバクターについて

 アシネトバクターは土壌や河川水などの自然環境中に生息する環境菌です。健康な人の皮膚などから見つかることもありますが、通常無害です。アシネトバクターには多くの種類があり、人の感染症例からはアシネトバクター・バウマニが最も多く検出されます。通常、感染症の流行は集中治療室の患者やその他の重症患者で起こり、医療機関の外で起こることは滅多にありません。

 多剤耐性アシネトバクターとは、通常のアシネトバクター感染症の治療に使用する抗菌薬がほとんど効かなくなっている菌のことです。日本での定義は、カルバペネム系、アミノグリコシド系、フルオロキノロン系の抗菌薬全てに耐性を示す株とされています。

 当初は欧米で多剤耐性アシネトバクターが問題となり、近年は中国や韓国、東南アジア諸国でも流行が報告されるようになっています。

 日本での検出状況は、厚生労働省の院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infections Surveillance:JANIS)によると、2016年に報告されたアシネトバクター分離患者数は32,270人であり、そのうち多剤耐性アシネトバクター分離患者数は130人(0.40%)でした。

      (国立感染症研究所 感染症疫学センター 多剤耐性アシネトバクター感染症 Q&Aより)

(2)IMP-1について

 カルバペネム系抗菌薬を分解する酵素の一種です。このIMP-1と呼ばれるカルバペネム系抗菌薬に対する薬剤耐性遺伝子は、プラスミドと呼ばれる、染色体とは異なる細胞内にある小さなDNA分子上にその情報があり、近縁の細菌間ではその遺伝子情報が伝達されます。

(3)感染症の発症と保菌状態の違いについて

 感染症の発症とは、病原体に感染した結果、咳やくしゃみ、発熱など、臨床的に問題となる感染症状を呈している状態を指します。一方、保菌状態とは、病原体は検出されるものの、その病原体自体が生体に侵襲を加えておらず、感染症を発症していない状態を指します。

  

    公表用資料:多剤耐性アシネトバクター検出事例に関するご報告(PDF形式) ←(ここを

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